drunken J**** in a motel room

文字通り酔っ払った時に書いてるブログ

DKBテオ君とツーショットをとるために課金した追加集金INL、全てのお金が無駄だったのでインターネットの海に供養します。

11月4日 

 土曜日、朝8時45分から始まる20分ごとに誰かの体調を確かめるだけの仕事をしながら、脇にその仕事でもらえる給金の100分の1の値段がするアイスアメリカーノを飲みながら、私はY2K新書で紹介されていた5cmくらいの文庫本を読みふけっていた。

 とにかく今週は自分の運勢が悪いカルマに飲み込まれたような気分になる出来事ばかり起こって気が滅入っていた。その最たるものは自分の中での約束事をやぶってまで特典を当てるために大量購入したCDを6年前に住んでいた住居へ送ってしまったという事件であった。物を増やしたくないということからすると、自分の手元に実物は来ないけど特典抽選にだけ応募できたという事実は喜ぶべきことなのかもしれない。しかし、見ず知らずの他人が購入した同じCDが大量に届いたという、先方の気持ちを考えると目の前がくらくらする。現入居者からの連絡をまったが音沙汰もないので、不動産屋に問い合わせたのが4日前のことで、不動産やが大家に問い合わせて”そんなものが届いて宅配ボックスに入っているという事実はないし、自分から現入居者に問い合わせる義務もない”という梨の礫のような返事が来たのも4日前のことだった。

 正直なところ腹が立ったので警察の相談電話へ問い合わせをしようとも思った。確かに送付先の設定を間違えたのは私の問題だが、数万円かかったものをそんなふうに自分の仕事じゃないから何もしないという態度を取るのはおかしいと感じたし、他人のものを勝手に処分する権利は先方にだってないはずなのだ。退去のとき、室内の点検にきた業者から言われた、ここの大家はすこしうるさいから、という言葉を5年ぶりに思い出した。JERKめ。

 事態が好転したように思えたのはその翌日のことだった。最初に対応してくれた不動産会社の女性が物件の管理会社の連絡先を私に教えてくれたのだ。管理会社に電話をかけると、なんてこともないかのように私の心配事を受け止め対応してくれるとの回答をえることができた。それが3日前のことだった。当日にも、翌日にも返事がないことに気を病みながらこちらから再度連絡をしたくなる衝動をなんとか抑えながら私は過ごしていた。自分の考えを別のことに持っていく必要があった。

 ”女優エブリンと7人の夫”はそんなときに私が時間を埋めるために手に取った本だった。気取ったところのない読みやすい文体、そして整理された話の運び、一人のクィア女性の歴史と矜持、後半3/4で明かされる読者の感情を揺さぶる展開、すべてが完璧な小説であった。自分と自分の大切なものを守るという人間としてのプリミティブな行動から、自分の行動が社会に対して何らかのフックになりえることを確信し行動すると決意した一人の人間の考えの移り変わりが、変わりゆく時代と社会にマッチしている。特に困難と悲しみばかりが多く感じられる現代社会に何らかの希望を抱きそうにもなった。3時間の勤務中にこの本を読み終えた私に1本の電話がかかってきた。現入居者と連絡がとれ、宅配ボックスに入った私の荷物を引き渡すことに協力するという旨の返事があったという内容を知らされた。

 家から20分ほどのその住所に赴き、無事荷物を受け取る。ずっしりと重い私の荷物。これのことを思い気が滅入っていたここ一週間の気分が全て晴れる。暖簾に腕押しの対応をされたり、しつこいな何だこいつみたいなげんなりとした態度を取られるたびに、私がもっと低い声で肩幅が広くて視点ももう少し高くて小さいけれど確かに胸についたこの2つの膨らみがなかったら、それとも誰もが振り向くようなはっとする美しい顔持っていたらもう少し物事はスムーズに進んだのだろうかとか、そんな破滅的な思考もどこかにいってしまった。登場人物でJERKなのは大家一人だったとかそんな恨み言もちらりと浮かんで消えていった。

 

 私の中には昔から、自分の考えや行動の原理や正しさは自分だけがわかっていればいいという他者と世界を受け入れない不寛容な考えがある。誰にも理解されなくてもいい、世界が変わることなんてないのだから、という特権的で独りよがりな考えは思春期にしか許されないものなのにこの年までそんなふうに生きてきてしまった。私たちが自分で選択できるのは自分の考えと行動だけなのだから、年齢を重ねたならばそれを他者や世界のために使うべきなのに。自分のことを全部受け入れ肯定し愛するというのはセルフケアの一歩目であろう。しかし、そこから自己批判を手に入れなければ私達は成長できないしJERKとなり、ともすれば世の中に害を与える存在になってしまう。エブリンとこの騒動は私の中に思いもよらずポジティブな気持ちと思考をもたらしてくれた。